Deep Fluids:流体シミュレーションをディープラーニングで近似する

チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)、ミュンヘン工科大学、Pixarによるディープラーニングで流体シミュレーションを近似する研究 Deep Fluids: A Generative Network for Parameterized Fluid Simulationsプロジェクトページソースコードが公開されている。

Deep Fluids

本研究では、削減済みのパラメータセットから流体シミュレーションを合成する新しい生成モデルを提案します。畳み込みニューラルネットワークを離散パラメータ化した流体シミュレーションの速度場(velocity fields)で訓練しました。

訓練データの代表的な特徴を学習するディープラーニングアーキテクチャの特性により、本研究の生成モデルは訓練データセットを正確に近似しつつ、中間値をもっともらしく補間することができます。この生成モデルは、全ての時刻で速度場(velocity fields)の無発散(divergence-free)を保証する新しい損失関数を導入することで流体に最適化されています。

本研究ではさらに、複雑なパラメータを削減した空間で扱えること、潜在空間(latent space)で第2のネットワークと統合することでシミュレーションをリアルタイムに実現できることを示します。
本手法では流体の多種多様な挙動をモデル化しているため、高速なシミュレーション構築、異なるパラメータを持つ流体の補間、タイムリサンプリング、潜在空間(latent space)シミュレーション、シミュレーションデータの圧縮などに応用できます。

本手法による速度場の再構築は、同データをCPUで再シミュレーションするよりも最大で700倍高速に生成でき、圧縮率は最大1300倍となります。


スポンサーリンク

5月に開催されるEurographics 2019で発表されるそうです。


スポンサーリンク


ETH Zurichといえば、数年前にRegression Forestベースの流体シミュレーション近似手法Pysics Forestsを発表していましたね↓
Physics Forests:機械学習で流体シミュレーションを近似する
CG分野(特にレンダリング)では、現実の物体・現象の性質をモデル化して扱う。計算リソースには限りがあるので、大抵の場合は視覚に大きく影響する要素だけをモデル化して関数などで表現する。実測値や物理法則に基づいた計算を行う「物理モデル」に対して...


機械学習による流体シミュレーション近似を突き詰めていくと、やっぱりニューラルネットワークに行き着くということなのだろうか。

GitHubで公開されているDeep Fluidsのソースコードを見ると、TensorFlowベースで実装されているようだ↓
https://github.com/byungsook/deep-fluids

mantaflowという流体シミュレーションのフレームワークを使って訓練用のデータセットを用意するんですね↓

mantaflow

mantaflowは、コンピューターグラフィックスでの流体シミュレーションの研究を対象としたオープンソースのフレームワークです。
並列化されたC++のsolverコア、pythonシーン定義のインターフェイス、プラグインシステムにより、新しいアルゴリズムの迅速なプロトタイピング・テストが可能です。mantaflowには広範囲のNavier-Storkes solverの変種が含まれています。
mantaflowはとても用途が広く、ディープラーニングのフレームワーク(例:numpyを介してTensorFlow)と連携してインポート/エクスポートを可能な他、matlabのプラグインとしてスタンドアローンにコンパイルすることもできます。
最新版のダウンロードはこちら

Physics Forestsで著者の1人にDisney Research所属の人がいたように、Deep Fluidsの著者の中にはPixar所属の人がいますね。

CGで一昔前は物理ベースと言われていたジャンルが、演算コストが頭打ちになってだんだんナレッジ(知識)ベースへと移ってきているということだろうか。
大きな目で見ると、現象をデフォルメして軽い処理で近似していた時代に戻っているような気もする。

多次元パラメータを扱う関数の多いCG分野はディープラーニング(というかニューラルネットワーク)に向いてるのかもな。
畳み込みって、テクスチャマッピングやShading処理そのものだし、GPUとの相性も良い。
https://shiropen.com/seamless/deep-fluids

NVIDIAがGPGPUと言い始めたころ、その使用例は流体計算が多かった気がするけど、時代を経て手を変え品を変え、結局GPUで流体計算しているのも何だか不思議。


スポンサーリンク

関連記事

Super Resolution:OpenCVの超解像処理モジュール
konashiのサンプルコードを動かしてみた
After Effects全エフェクトの解説(6.5)
Python for Unity:UnityEditorでPythonを使えるパッケージ
『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のVFXブレイクダウン まとめ
iPhone 3GSがますます欲しくなる動画
プログラミングスキルとは何か?
SegNet:ディープラーニングによるSemantic Segmentation手法
Manim:Pythonで使える数学アニメーションライブラリ
2012のメイキングまとめ(途中)
PythonでBlenderのAdd-on開発
ディズニー映画『ズートピア』を観た
フリーで使えるスカルプト系モデリングツール『Sculptris 』
ツールの補助で効率的に研究論文を読む
書籍『OpenCV 3 プログラミングブック』を購入
OpenCVでPhotoshopのプラグイン開発
ZBrushでUndo Historyを動画に書き出す
ManimML:機械学習の概念を視覚的に説明するためのライブラリ
オープンソースの顔の動作解析ツールキット『OpenFace』
ZBrushで仮面ライダー3号を造る 仮面編
ZBrushでゴジラ2001を作ってみる 目元だけ作り込んでバランスを見る
天体写真の3D動画
OpenCVでiPhone6sのカメラをキャリブレーションする
ZBrushでアヴァン・ガメラを作ってみる 下半身のバランス調整
SVM (Support Vector Machine)
2012 昨日のクローズアップ現代を見た
Mitsuba 3:オープンソースの研究向けレンダラ
OpenGVのライブラリ構成
ドラマ『ファーストクラス』のモーショングラフィックス
Maya 2015から標準搭載されたMILA
Unityをレンダラとして活用する
Maya API Reference
3Dスキャンしたテクスチャから照明を除去するUnityツール『De Lighting tool』
Mayaのシェーディングノードの区分
TeleSculptor:空撮動画からPhotogrammetryするツール
Kubric:機械学習用アノテーション付き動画生成パイプライン
ZBrushのハードサーフェイス用ブラシ
ROSでガンダムを動かす
Amazon Web ServicesでWordPress
OpenFace:Deep Neural Networkによる顔の個人識別フレームワーク
openMVGをWindows10 Visual Studio 2015環境でビルドする
ZBrushでアヴァン・ガメラを作ってみる 頭頂部と首周りを作り込む

コメント