Physically Based Rendering

会社員になってからすっかり画像認識の人になってしまったけど、最近のCGレンダリング事情にキャッチアップしておきたい。
リアルタイムレンダリング系の書籍を買っておきながらしばらく積んでいた↓

リアルタイムレンダリング 第4版 (Real Time Rendering Fourth Edition 日本語版)ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版

画像認識もCGも、リアルタイム化を目指す際の考え方は共通点が多いと最近感じる。
極力ユースケースを絞って重い処理はなるべく事前計算へ追いやり、キャッシュをフル活用してリッチな処理を近似する。実行時の自由度と処理負荷のバランスを調整していく。。
応答のリアルタイム性を追求するとどんなジャンルでも考え方は似通ってくるのかな。

レンダラやGPUアーキテクチャの話もあるけど、基本はやっぱりBRDF(反射)なので、とりあえずミクロなスケールでShaderの話からキャッチアップして行こう。

今月のCG WORLDはPBR (Physically Based Rendering)特集だったね。

CGWORLD (シージーワールド) 2020年 09月号 [雑誌]



BRDFの近年までの歴史を概観するのにTeppei Kuritaさんが公開している資料がとても分かりやすい↓

Cook-Torrance

この分野は長らく遠ざかっていたので、オイラの実装知識はCook-Torranceぐらいまでで止まっている↓

学生の頃、C++の勉強も兼ねてCook-TorranceをMayaのShaderプラグインとして実装したことがある↓



https://github.com/NegativeMind/Maya-Plugins

当時、Mayaの標準レンダラに搭載されていたShaderはBlinnやPhongぐらいだった。(mentalrayにはCook-Torranceも搭載されていた)

幾何減衰項G、フレネル項F、マイクロファセット分布項Dで構成されたパラメーターが、オイラにとっては模型の塗装みたいで直感的だった。プログラミングを習得する題材としてちょうどよかったな。

PBR Shader

現在多くのDCCツールでデファクトスタンダードとなっている通称PBR Shaderと呼ばれる反射モデルは、2012年にDisneyが発表したDisney Principled BRDFがベース。

物理モデルBRDFでは、物体の質感を以下の要素で定義する↓

  • Albedo (反射比率)
  • Metalness (金属か誘導体か)
  • Roughness (表面の粗さ)
  • IOR (屈折率)

Disney Principled BRDFは物理モデルをベースに、アーティストが直感的に質感を調整できるようパラメーターが設計されている。それまでDCCツールで主流だったLambertやPhongといった推論モデルに対して、物理モデルを裏付けとしたShaderだからPBR(Physically Based Rendering) Shaderと呼ばれるわけですね。

追記:ご指摘いただいたので補足。Lambertを推論モデルに括るのは雑でした。
ここで言いたかったのはLambert反射の定義ではなく、当時のDCCツール(というかMaya)に搭載されていたLambertマテリアルの話。
DCCツール、というか多くのCGプログラムでLambertは実装が省略されていて、エネルギー保存が成立していなかった。定義に従ってLambert Shaderを書き直してみたことがある↓



2015年、Disney Principled BRDFをさらに発展させて、BRDF(反射)だけでなくBTDF(屈折・透過)も合わせたBSDFモデルが発表され、現在に至る。
BSDF: (Bidirectional scattering distribution function)
BSDF: Bidirectional Scattering Distribution Function (双方向散乱分布関数) = BRDF: Bidirectional Reflectance Distribution Function...


BlenderデフォルトマテリアルのPrincipled BSDFもDisney Principled BRDFがベース↓

左:英語、右:日本語



各パラメータの解説はこちらの記事が詳しい↓
http://bluebirdofoz.hatenablog.com/entry/2019/10/05/091604

ここ数年はSIGGRAPHでも毎年Physically Based Shading in Theory and Practiceのコースが設けられている。



今年のコースのスライド↓
https://blog.selfshadow.com/publications/s2020-shading-course/

結局、スライドだけでなくセッション動画も公開されましたね↓


関連記事

ヒーローに変身なりきりアーケードゲーム『ナレルンダー』

bpy-renderer:レンダリング用Pythonパッケージ

ZBrushでアヴァン・ガメラを作ってみる 壊れたデータの救出

Physics Forests:機械学習で流体シミュレーションを近似する

写真から3Dメッシュの生成・編集ができる無料ツール『Autodesk Memento』

ポリ男からMetaHumanを作る

Blender 2.8がついに正式リリース!

写真に3Dオブジェクトを違和感無く合成する『3DPhotoMagic』

タマムシっぽい質感

頭蓋骨からの顔復元と進化過程の可視化

日立のフルパララックス立体ディスプレイ

無料で使える人体3DCG作成ツール

スターウォーズ エピソードVIIの予告編

ZBrushのUV MasterでUV展開

clearcoat Shader

uGUI:Unityの新しいGUI作成システム

SculptrisとBlenderで作ったGodzilla 2014 (Fan Made)

アニゴジ関連情報

デザインのリファイン再び

トランスフォーマーロストエイジのメイキング

池袋パルコで3Dのバーチャルフィッティング『ウェアラブル クロージング バイ アーバンリサーチ』

ポリ男をリファイン

ZBrushで仮面ライダー3号を造る 仮面編 ZRemesher

日本でMakersは普及するだろうか?

ポリゴンジオメトリ処理ライブラリ『pmp-library (Polygon Mesh Process...

HD画質の無駄遣い その2

ZBrushでアヴァン・ガメラを作ってみる おでこ(?)のバランス調整

Faceshiftで表情をキャプチャしてBlender上でMakeHumanのメッシュを動かすデモ

立体視を試してみた

CGのためのディープラーニング

ハリウッド版「GAIKING」パイロット映像

ZScript

レンダラ制作はOpenGL とか DirectX を使わなくてもできるんだぜ

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のVFXブレイクダウン

Rerun:マルチモーダルデータの可視化アプリとSDK

実写と実写の合成時の色の馴染ませテクニック

ゴジラの造形

トランスフォーマー :リベンジのメイキング (デジタルドメイン)

Ambient Occlusionを解析的に求める

書籍『メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々』を読んだ

SIGGRAPH 2020はオンライン開催

『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』のVFXブレイクダウン まとめ

コメント