映画『カメラを止めるな!』を観た (ネタバレあり)

今話題の映画「カメラを止めるな!」を見てきた。

本作はもともと小規模上映のインディーズ作品で、それが口コミで人気に火がつき、上映規模がどんどん拡大されて、オイラも最寄りの劇場で観ることができた。監督の上田慎一郎氏にとって初の劇場長編作品だそうです。

カメラを止めるな!



この映画は「事前知識なしで見た方が良い」という意見も聞くけど、本作がネタバレで面白さを完全に損ってしまうタイプの作品かと言うと、そうでもない気がする。(予告編でもそのギミックは明かしているし)

もちろん、完全初見でポカーンとした感覚も貴重ではある。本作は初見と2回目以降では冒頭の見え方がガラッと変わってしまうのだ。そして、きっともう1度最初から見返したくなる。

以下からはネタバレありの感想なので、初見の感覚を大事にしたい方は映画鑑賞後にお読みください。


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この映画は二度はじまる

本作の宣伝キャッチコピーに「この映画は二度はじまる」とあるように、本作は劇中番組(30分ワンカットの生中継ゾンビドラマ)から始まり、その後その劇中番組制作の舞台裏の物語が始まる。
観客は劇中番組を制作側の視点で再び見ることとなり、冒頭で見た劇中番組の各シーンが別の文脈で見えるようになる、というのが本作の根幹となるギミック。
冒頭で30分(実際には37分)も劇中番組のワンカットゾンビドラマを見せられて、そのところどころに感じた違和感の正体が後半の舞台裏物語で明かされる。

お仕事ドラマ

本作の主人公は、30分ワンカット生中継ドラマという無茶な企画の監督を任された職業監督。
普段はTV番組の再現ドラマパートの監督などを生業としており、自身の作品づくりではなく、あくまでスケジュール・予算内にそこそこの映像を仕上げる業界人。

監督とはいえ、その立場は弱く、彼の裁量で決められることは多くない。プロデューサーによる無茶な企画やキャスティングを受け入れ、その中で放送事故を起こさずに番組を成立させるのが彼の仕事。当然、作品の完成度は二の次になる。
その立場は、無茶ぶりする上司と、言うことを聞かない部下の間で板挟みになる中間管理職のようだ。実際、番組のために集められたスタッフ・キャストは監督の部下というわけでもなく、むしろ気を使う対象だったりする。監督として責任を負わされる割に権限が弱く、ちょっと番組の奴隷みたいですね。
職業監督というのは、おそらく映像産業におけるプロジェクトマネージャーということなんだろうな。あるいは現場監督か。作家性は期待されず「作品よりも番組」が求められる。

この辺りは業種にかかわらず、会社組織で働く人、あるいはそういうヒエラルキーの中で働く人ならみんな共感するところなんじゃないかな。自分自身でも成果物に納得はできないけど、日々の仕事として、生活のためにも淡々とこなしていくしかない。

裏方の奮闘コメディ

ワンカット生中継という無謀な企画では、当然様々なトラブルが発生し、それは現場の瞬発力でどうにか解決していくしかない。
上田監督自身もインタビュー等で語っている通り、こういうシチュエーション・展開は三谷幸喜っぽさというか、「ラヂオの時間」を思い出しますね。

ラヂオの時間

すでに解散してしまった劇団PEACEの舞台「GHOST IN THE BOX!」が元ネタだそうです。権利関係でちょっとしたニュースになって、もう平然とネタバレ状態ですね。

  映画のキャッチコピーは、「最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。」だ。“37分間の安っぽいゾンビ映画” が終わったその後に「何かが起こる」というのがこの映画の肝だが、社会現象ともいえる熱狂のなか、監督と原作者の間にも「何かが起きていた」とは、誰も思いもよらなかったであろうーー。 「映画の評判は、僕も周囲から聞...
本来なら紛争を予防するのに役立つはずの契約書。しかし、その交渉をはじめるタイミングが少し遅かったがために、まとまる話もまとまらなくなる、そんな典型的事例が日本の映画業界で発生してしまいました。

トラブルを誤魔化す咄嗟のアドリブの中に登場人物の本音が混じったり、突然予定外の役割が回ってきたり、またある人にとってはそれが大きなチャンスで、諦めかけていた夢を見ることができたり。

立場や役割も関係なく、その場にいる全員が共犯関係になってトラブルを乗り越えていく様は清々しさもある。その場でできることには限りがあるからこそ、職種も立場も関係なくなった状態がどこか文化祭的。火事場の馬鹿力のような連係プレーは滑稽で笑えるけど、最後に拍手したくなるような気持ち良さ。

そして、このテレビプロデューサーは現場の苦労を微塵も知らずに、この実績でさらに出世するんだろうな、感も匂わせる。

仕事と自己実現

本作の主題ではないと思うけど、この映画を見ていて「生業としての仕事」と「専門職としての自己実現」ってどの分野でも両立が難しいことなのか、と色々考えてしまった。こだわりの無い人の方が多くの実績を積み、より大きなチャンスを得られるのだろうか。

日銭を稼ぐためにも仕事はこなし続けなければならないし、1つ1つにこだわっていたらちっとも数をこなせない。品質にそれほどこだわらず、スケジュール内・予算内でこなせる人間は便利なスタッフではあるけど、そもそもその職業を志した頃に目指した姿は何だったのか。

特に映像制作という仕事は、自分が監督した映像は自身の作品であるという側面、そしてその作品は後世に残り続けるというのがちょっと残酷だ。

似たジャンルの作品

まだ未見なんだけど、Twitterで「サマータイム・マシン・ブルース」が似たジャンルの作品としておススメされていた。

サマータイム・マシン・ブルース

幸い「サマータイム・マシン・ブルース」は現在Amazonプライム・ビデオで視聴できるので観てみるか。


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