動画配信ぐらい当たり前の時代

「好きなことで、生きていく」ってやたら個人を持ち上げているYoutubeのCMを見て、ふと昔を振り返ってみた。(最近こんなのばっかりだな)

個人での動画制作くらいはもはや当然で、それをすぐに世の中へ発信できる時代になった。昔、動画制作に結構なエネルギーを費やしていたオイラとしては、ちょっと不思議な感じもするのだ。
オイラが初めてパソコンでビデオ編集をしたのは中学生の頃だった。WordとかExcelみたいな一般的なアプリケーションよりも先に、ビデオ編集ツール Adobe Premiereの使い方を習得したのである。編集を始める以前からビデオを撮るのは好きだった。小学校高学年くらいから特撮っぽいビデオを撮って遊ぶのが趣味だったのだ。今思えばちょっと変な小学生だった。

当時使っていたPCはWindows98上で、Adobe Premiere 5.1(まだCSですらなかった)を使っていた。撮影に使うビデオカメラはデジタルではあったが、記録媒体はDVテープだった。撮影した動画をPCに取り込むのも、今の時代から思えば結構な手間だった。キャプチャボードを経由してPCとビデオカメラをIEEE1394で接続し、カメラ側でビデオを再生して取り込んでいく。単純に1倍速のデータ転送というわけ。
PC上では、まだファイルシステムの仕様で、2GB以上のファイルが扱えなかった。720×480解像度のDVのフォーマットで言うと、大体10分くらいの尺で1つのファイルとなる。
PCのHDDの容量はせいぜい20GB程度だったので、編集後のデータはテープに書き戻していた。


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Adobe Premiereはカット編集がメインのツールだが、ちょっとしたエフェクト機能は搭載されていた。それらの機能の組み合わせを工夫して、特撮っぽいことができるのがとても楽しかった。トランジションエフェクト、テロップや簡単なクロマキーの合成も、使い方次第で色々な効果に応用できた。クロマキーを利用してライトセーバーを光らせたり、タイトル機能を利用してビームを作ったり、レンズフレアエフェクトでスパークさせてジェダイごっこムービーを制作した。

最初は特撮映像の制作がモチベーションだったが、だんだんと、映像編集の理論に興味を持ち始めた。イマジナリーラインという言葉を知ったのもこの頃。録画したアニメや特撮番組のオープニングを1コマずつ見たり、自分なりに編集し直す、今で言うMADみたいなものを作ったりもした。映像構成の理論学びたいと思うようになった。



この頃から、映像制作が学びのモチベーションとなった。映像制作のためにPCの自作を学び、映像制作のためのIT技術を学んだ。CGを使いこなすためには、根幹となる技術に精通すべきだと考えて進路を決めたのだ。自分で映像制作の道具を作れるようになりたかった。自分が表現したいビジュアルを具現化する道具を、自分で作れたら最強だろうと。

あれからもう15年くらい経った。
制作環境は随分と進化した。ビデオカメラの記録媒体はテープではなくなり、そもそもカメラ専用機ではなくiPhoneでも充分に代用可能で、解像度はフルHDだ。PCへの取り込みも、USBで接続して動画ファイルをドラッグ&ドロップすれば済む。カット編集ぐらいならフリーのツールでどうにかなる。
先人達の作品を見るのも実に簡単だ。プロアマ問わず、大概はネット上で公開されている。(有料・無料の有無はあるけど)
制作環境が格段に進化したが、オイラ自身も少しはレベルアップした。今なら制作ツールのプラグインぐらい自分で作れる。

制作環境の進化で、より手軽に発信できるようになると、個々人の発信力はますます大きくなるかもしれない。ただ、その人に溜まっていたもの、それまで積み上げてきた執念みたいなところで、影響力に大きな違いが出てくるんじゃないか、なんて思うオイラなのであります。

件のCMに登場する人達も、表現したい欲求が長らく溜まっていたんじゃないだろうか。(承認欲求に近いのかも)
あれだけ続けるって結構なエネルギーだと思うよ。
CMの趣旨としては「みんなも同じように、好きなことで生きていけるよ」って言いたいんだろうけど、ちょっと違う気がする。Youtube側としては参入障壁を下げたいんだろうけど。



あのCMの上手いところは、ちょっと頑張れば何となく真似できそうなレベルの人を集めてるところだよね。


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