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成果を待てない長学歴化の時代

文部科学省の大学改革検討会議で提案された、大学のG型・L型案がすでに色んな所で話題になっている。

L型大学のモデル
L型大学のモデル:ドイツの専門大学の話
L型大学の話

この提案は日本の大学を以下の2つに区分して徹底的に特化させようというもの。

  • G型:グローバル(global)で通じる人材を育てる
  • L型:ローカル(国内)で仕事に就くための教育を行う職業訓練校

この件についてのオイラの感想は、基本的に以下の2つ。

個人的にモヤモヤしていることも含めて考えていたら長くなったので、順を追って書いていく。
オイラとしてはまず、難関校を卒業したいわゆる学歴が高い”高”学歴ではなく、学生である期間が長い”長”学歴という概念を提唱してから話を進めたい。


長学歴とは?

ここで言う「長い」というのは、休学とか留年の有無ではなく、単純に規定の就学期間の合計、つまり義務教育後にどういう種別の教育機関を選んできたかということ。あるレールの上で競争を勝ち抜いた学歴の高い人達ではなく、スパンの長いレールを選んだ、学歴の長い人達のこと。

例えば、普通の大卒なら、義務教育が9年間、高校が3年間、大学が4年間で「義務教育に加えて7年間の学歴」といった具合。卒業した学校の偏差値などは問わない。厳密に言うと大検とかもあったりするけど、ここでは無視。「普通の大卒」という表現も語弊があるかもしれないけど、医学部みたいに国家資格とほぼ直結してる特殊な例と区別しているだけ。

大学の存在価値の変化

大学全入時代なんて言われるように、昔とは大学の位置づけも変わってきているらしい。大学の数は増えたけど、少子化で学生の絶対数は減っている。それに対して企業の求人条件は、以前なら高卒者を採っていた仕事が、今は大卒者の仕事になっていて、仕事内容に対して過剰な長学歴とも思える。就職活動関係では若手先輩社員が「大学の授業は全く仕事の役に立たない」なんてドヤ顔で語る光景をよく目にした。

これは単純に、本人が学校選び、会社選びを間違えただけの話だと思うのだが、どうやら大学とは学業の場ではなく、単なるモラトリアム期間であると捉えるのが一般的なようだ。特に、そう捉えている世代の発言力が大きいように思える。実践力重視の風潮は、彼らの実体験の反動にも聞こえる。

企業が期待する新卒人材

企業側が新卒者に実践スキルを求める背景も解らなくはない。昔ほどの人数は採れないし、時間をかけて教育する余裕も無いので、仕事に対して早熟な新卒が欲しくなる。中途ではなく新卒にそれを求めるのは人件費の関係だろうか。そういう観点では、高専卒の人材の需要が高いらしい。実践力という点では大卒者と同等以上で、年齢は大卒者よりも若い。(年齢は微々たる差だが)企業からすると、大卒者は学歴の長さの割に「使えない人材」に見えるようだ。本来、新卒というのは即戦力になるはずもないのだが、「学業に時間をかけたのならスキルも高くあるべき」と言われると、まあそんな気もしてくる。一応初任給に差はあるからね。
新卒採用の歪みについては、スティーブジョブスのような尖った人材が欲しいとか、より迷走に陥っている部分もあるみたい↓
要は報われたいだけですよ!


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教育の効果はすぐには出ない

一方、教育制度の成果を測るのは非常に難しい。教育カリキュラムは、中長期スパンでの成果を見込んで組まれるものであって、高々半年・1年後に効果が数字になって現れるようなものではない。何かと悪いイメージで引用される「ゆとり教育」も、本来目指していた成果を測れるようになるのはまだまだ先の事のはずだ。その時を待たずして叩かれまくったわけだけど。

そもそも学校で実践スキルを学べるのか?

よくある話で、これまで人材の質の低下を教育制度で解決しようとすると、規定の教育期間がどんどん長くなる傾向にあった。司法試験の法科大学院設立や、薬剤師の薬学部6年制、教員免許を取る教職課程も6年制が検討されているという。特に資格の要らない職業でも、大学や専門学校で養成コースが新設されたりする。こうしてどんどん長学歴化していく。

医者はもともと6年制だが、大学卒業、医師免許取得後に研修医という制度がある。名門校卒の新卒医より、地方大出身でも研修医を1年経験した医者の方が遥かに役に立つという話も聞く。国家試験が必要な専門職においても、現場での就業経験が業務スキルに大きく影響するということだろう。研修医期間は激務となるので、これはこれで問題のある制度のようだが。

日本の労働スタイルにも問題が

結局のところ、この国の労働スタイルの中では、実践スキルを学ぶには現場での就業経験が必要であって、教育機関で完結させるのは無理なのだろう。どんなにやっても、現場でのコミュニケーションの手助け程度にしかならないはずだ。学歴が長くなる割には使えない現象は、教育側だけの問題では無さそうな気がする。たぶん転職市場でも、前職での身につけたスキルをすんなり発揮できないのがこの国の労働環境だと思う。人材の流動性が低いためなのか、労働環境での情報伝達の仕組みが極めて貧弱なのだ。というのがオイラの考え。

短期スパンでの施策に傾倒していないか?

さて、件の文科省の会議での提案でもう1つ思うのは、教育に対して随分と「短期スパンで目に見える成果を出そうとしている」ように見えること。即戦力を叩き込むと、変化に非常に弱くなる気がするんだが、教育プランとして大丈夫なのだろうか。「大学の存在意義が解っていない」なんて言われてしまうのはこの短期目標への過剰な最適化プランに思える。企業だけでなく、国としても長期スパンの目標が立てづらいのだろうか。成果が出ないとすぐに打ち切りになるのは企業も国も変わらない時代なのかも。

制度に期待し過ぎないこと

結局のところ、個人としては教育制度や研修制度に期待し過ぎないのが1番だろう。専門知識を学ぶ学校の卒業生の内、専門家になったのはほんの一握りなんて話は多いし、職業なんて時代とともに消えることもある。教育制度でできることなんて、進路を選ぶきっかけぐらいでしかない。理想的な制度なんてものがそう簡単に完成するはずはないのだから。

最後に、オイラが思う「使える人材」になる学び方は「明確な目的意識を持って学ぶ」ことに尽きる。どんな場所でも「使える人材」に共通するのは「変化に適応できる人」だ。環境の変化に気づいて、必要となるものを見つけられるようになろう。


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